慢性腎臓病(CKD)
慢性腎臓病(CKD)とは
慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)とは、腎臓に長期間障害が起きている状態です。
- 腎機能低下(eGFRが60未満)が3か月以上続く
- あるいは、腎障害を示す所見(蛋白尿、血尿、画像所見など)が3か月以上続く
CKDは珍しい病気ではなく、成人の中でも8人に1人がかかっているとされる“身近な病気”です。
問題は、腎臓は肝臓と並んで「沈黙の臓器」ともいわれ、初期〜中等度の病状では自覚症状が少ないことが多い点です。放置すると腎機能が徐々に低下し、最終的に腎不全へ進行して透析や腎移植が必要になることがあります。
また、CKDがあると心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクが高まることも知られており、腎臓だけでなく全身の健康に関わります。
早期からの管理で進行をゆるやかにできる可能性があるため、早めの受診が大切です。
このような方はご受診ください
- むくみ(まぶた・足など)が気になる
- 疲れやすい/だるい、息切れしやすい
- 吐き気がすることが多い、味覚が鈍くなった
- 尿の回数が増加、または減少した
- 夜間の尿回数が増えた(3回以上)
- 尿の泡立ちが目立つ
- 血圧が高い、血圧が以前より上がってきた
- 糖尿病・高血圧・脂質異常症がある
- 急に体重が増えた
- 健診で蛋白尿・血尿を指摘された
- 血液検査でクレアチニン高値やeGFR低下を指摘された
- ご家族に腎臓病の方がいる、腎臓が心配
- 痛み止めなど薬を長く使っている(心当たりがある)
慢性腎臓病(CKD)の主な原因
腎そのものの病気
糸球体腎炎(例:IgA腎症など)、ネフローゼ症候群、間質性腎炎、多発性嚢胞腎など、腎臓そのものに炎症や構造の変化が起こる病気が含まれます。
尿検査で蛋白尿や血尿が出たり、腎機能が低下したりします。
生活習慣病が関係するもの
CKDの原因として非常に多いのが、糖尿病や高血圧です。
これらは腎臓の小さな血管を障害し、腎機能を低下させてしまいます。
糖尿病腎症、高血圧による腎硬化症などが代表的で、血糖・血圧の管理が腎機能の維持に直結します。
また脂質異常症や肥満、喫煙も腎臓と血管に負担をかけ、進行要因になります。
その他(尿路・循環・薬剤など)
尿路結石や前立腺肥大などで尿の流れが悪くなる病気(閉塞性の病態)、繰り返す腎盂腎炎、脱水や心不全など循環の問題は、腎臓に大きな負担をもたらします。
また薬剤性腎障害(特定の薬を長期間使用した場合など)も原因となりえます。
これらの原因が複数重なっていることも少なくありません。
慢性腎臓病(CKD)の検査
- 尿検査
- 採尿で蛋白尿・血尿の有無や程度を確認します。
尿沈渣(尿中の成分)を見ることで、腎臓由来の異常か尿路由来かの手がかりになることもあります。 - 血液検査
- クレアチニン、eGFRなどで腎機能を評価します。
加えて、貧血、電解質(カリウムなど)、炎症、糖・脂質の状態など、全身への影響や原因の手がかりも確認します。 - 腹部X線検査
- 結石の疑いがある場合などに用いられます(結石の種類によって写りにくいこともあります)。
- 超音波検査(エコー)
- 腎臓の大きさ、形、腎実質の状態、尿路の拡張(尿の流れの詰まり)、膀胱や前立腺の様子などを体への負担が少なく評価できます。
- CT検査
- 結石、腫瘤、尿路の通過障害などを詳しく評価します。腎臓の形の評価にも有用です。
造影CTが必要な場合は、腎機能やアレルギー歴を踏まえて検査方法を選び、必要に応じて連携医療機関で実施します。 - 腎生検
- 背中から針を刺して腎臓の組織を採取し、顕微鏡で調べ、腎炎などの正確な診断や治療方針決定に役立てます。
慢性腎臓病(CKD)の治療
CKD治療の目的は、腎機能の低下をゆるやかにし、合併症(心血管疾患、貧血、骨・ミネラル異常など)を防ぐことです。
一度障害されてしまった腎機能を元に戻すことは難しいですが、進行を抑え残った腎機能を保護することで、なるべく通常の生活を送れるようにすることが治療の目的となります。そのため、なるべく早く治療を開始することが大切です。
食事療法
基本は減塩で(1日6g未満を推奨)、これにより血圧とむくみの改善、腎臓への負担軽減につながります。病状に応じて、たんぱく質量の調整、カリウム・リンの調整、水分のとり方などを個別に検討します。
「自己流で極端に制限する」のは栄養不足につながることがあるため、検査値と生活状況を見ながら安全に整えます。
運動療法
無理のない有酸素運動(ウォーキングなど)やストレッチは、血圧・体重管理、血糖改善に役立ち、結果として腎臓を守ることにつながります。
息切れや心疾患がある方は、状態に合わせて運動量を調整します。
薬物療法
原因に応じた治療が中心です。例として、以下のような治療を行います。
- 高血圧がある場合:降圧治療(腎保護を意識した薬剤選択を含む)
- 糖尿病がある場合:血糖管理(腎機能に応じた薬剤調整)
- 蛋白尿が多い場合:蛋白尿を減らす治療
- 貧血、むくみ、電解質異常など:合併症に応じた治療
腎機能によって薬の量や選び方が変わるため、定期的な検査をしながら丁寧に調整していきます。
腎不全
腎不全とは
腎不全とは、腎臓の働きが大きく低下し、体の中の老廃物や余分な水分を十分に排出できなくなった状態です。
正常な時と比べて、腎臓の働きが15%未満になった場合(eGFR<15ml/min/1.73㎡)、腎不全とされます。
血液検査で腎機能の低下が明らかになり、体液・電解質バランスの異常や尿毒症症状が出てくる段階では、早急な対応が必要になります。
放置すると、心不全、不整脈、意識障害など命に関わる状態に至ることがあり、原因に応じた治療や、場合によっては透析や移植などの腎代替療法が必要になります。
このような方はご受診ください
- 尿量が明らかに減った/逆に夜間尿が増えた
- 強いむくみ、体重が急に増えた
- 貧血がみられる
- 動悸や息切れがする、横になると息苦しい
- 食欲不振、吐き気、口の中が苦い、体がかゆい
- 頭や背中、腰、腹部に痛みがある
- 強いだるさ、集中力低下、眠気が強い
- 足がつる、動悸、胸の違和感(電解質異常の可能性)
- 下痢・嘔吐・発熱などの後から体調が急に悪化した
- もともとCKDがあり、検査値が悪化したと言われた
腎不全の種類(急性腎不全と慢性腎不全)
腎不全には、短期間で急に悪化する急性腎不全(現在は急性腎障害:AKIと呼ぶこともあります)と、長い時間をかけて進行する慢性腎不全があります。
急性腎不全
急性腎不全は、数日〜数週間の短い期間で腎機能が急低下する状態です。
原因は大きく以下の3つに分けられます。
- 腎前性
- 腎臓に届く血流が減って起こるタイプです。
脱水(下痢・嘔吐・発熱)、出血、心不全などが代表で、早期に原因を改善すると回復が期待できます。 - 腎性
- 腎臓そのものが障害されるタイプです。
急性腎炎、薬剤性腎障害、感染や自己免疫に関連する腎障害などが含まれます。
原因に応じた治療が必要です。 - 腎後性
- 尿の通り道が詰まって起こるタイプです。前立腺肥大、尿路結石、腫瘍などで尿が流れにくくなり、腎臓に負担がかかります。
原因の解除が重要です。
慢性腎不全
慢性腎不全は、CKDが進行し、腎臓の働きが長期的に大きく低下した状態です。
数か月から数十年の長い年月をかけて腎臓の機能が徐々に低下していきます。
腎機能は回復することはなく、腎臓の働きが15%未満の末期腎不全に至ると、生命が脅かされ、人工透析や腎移植が必要になります。
症状は次のように現れます。
尿量の変化
夜間尿が増える、尿が薄くなる、進行すると尿量が減ることもある
尿毒症症状
食欲低下、吐き気、口の中の不快感、強いだるさ、集中力低下、眠気、皮膚のかゆみ など
その他
むくみ、息切れ(体液過剰)、貧血による疲れやすさ、血圧上昇、骨・ミネラル異常、電解質異常による足のつりや不整脈リスク など
以前は透析導入となる慢性腎不全の原因は慢性糸球体腎炎(IgA腎症や膜性腎症など)が圧倒的な割合を占めていました。しかし医学は進歩し適切な診断・治療法ができたことで透析導入の原因としては減り、現在は糖尿病と高血圧による腎硬化症が主要な原因となっています。これには長寿命化も影響しています。
基本的に腎硬化症は他の原因と比べて進行がゆっくりであるため、以前は「高齢だから透析が必要になるまでに天寿を全うする」と考えられることもありましたが、現在は90歳前後で透析導入する患者さまも多いため腎硬化症でも油断はできなくなっています。
腎不全の治療
食事療法
減塩を基本に、病状に応じて水分量、たんぱく質量、カリウム・リンなどを調整します。
栄養不足は体力低下や感染リスクにもつながるため、検査値を見ながら“必要な栄養を確保しつつ負担を減らす”ことが大切です。
薬物療法
むくみには利尿薬、貧血には造血に関わる治療、電解質異常(特に高カリウム血症)への対応、血圧・血糖管理、骨・ミネラル異常への治療など、合併症に応じた治療を組み合わせます。
腎機能が低下しているほど薬の調整が重要になります。
透析治療(血液透析・腹膜透析)、腎移植
腎機能がさらに低下し、体の中の老廃物や水分を自力で調整できなくなった場合、透析・腎移植という腎代替療法が検討されます。
血液透析
血液を体外に循環させ、透析器で老廃物や余分な水分を除去します。
一般に週3回の通院で行います。本来腎臓が週7回、24時間行っていた治療を週3回、1回4-5時間で行うため体に負担がかかりやすい治療です。血液透析を行っていても水分制限や塩分、カリウムの制限は大切です。
腹膜透析
お腹の中の腹膜を利用して透析を行う方法で、ご自宅にてご自身で行うのが基本です。
どうしても腎不全になるのは高齢者が多く、ご自身で行うのが難しいこと、腹膜透析を開始できる病院が少ないことなどから血液透析より患者数は少ない治療法になっています。
しかし徐々に腹膜透析が浸透し、腎不全の患者さま自身が高齢であっても介護者が方法を覚えたり、訪問看護師がサポートしたりして選びやすくなってきています。今後在宅腎不全患者さまが増えることが予想され、更に需要は高まるでしょう。
腎移植
腎不全の人(レシピエント)のからだに、健康な人(ドナー)の腎臓を片方移植する方法です。ドナーとレシピエントの条件(年齢、心肺機能、糖尿病の状態、血縁関係など)があり、全ての人が行える治療ではありません。術前検査に半年程かかることや、まだ移植が当たり前に根付いていないこと、移植の情報提供できる医師が少ないことなどから、まず血液透析や腹膜透析を行って移植することが多いです。
もちろん透析を行う前に、腎不全がいよいよ進行したときに腎移植を行うこともできますのでご希望のかたは適切な時期に適切な病院に紹介いたします。
透析、腎移植によって腎機能は補うことができます。しかし腎臓という臓器が機能不全となっており、他の臓器にも障害が出ている可能性があります。心臓、脳血管、下肢血管など全身の評価も必要です。
一番良いのは腎不全にならないようにすることですので、早期のCKDのときから腎臓専門医が介入して適切な検査・治療を受けるのが望ましいです。